日本酒の製造工程では、発酵後の絞った後も濾過、火入れ等の後工程に入ります。
もちろん、消毒殺菌や酵母の失活など必要なため後工程を行います。
しかし、その後工程を全て飛ばして、
お酒を絞ってすぐ瓶詰めする製法「槽場直詰」も存在します。
なるべく空気に触れず、その日本酒の風味をそのまま詰められるので、
とても贅沢な日本酒となります。
今日はその「槽場直詰」な日本酒1本を紹介してみます!
サラリーマン唎酒師の酔いどれ紳士が実際に飲んでレポートしてみました!
是非、今宵のお酒のヒントとなれば幸いです!

「昇龍蓬莱 きもと純米」について
「昇龍蓬莱 きもと純米」については神奈川県大矢孝酒造様の商品となります。
以下スペックです。
「昇龍蓬莱 きもと純米」
- 原材料名:山田錦※1
- 種類:純米(お米100%)
- 精米歩合(玄米の重量に対する白米の重量の割合):75%
- アルコール度数:17%
- 特記1:槽場直詰とは、お酒を絞る際に槽場で直接瓶詰めする製法です。お酒が空気に触れずに瓶詰めされるため、製造中に発生した炭酸ガスがしっかり残ります。また、この製法の場合、絞った後の工程(濾過、火入れ等)は行わないので、無濾過生原酒のお酒になります。
- 特記2:無濾過生原酒とは、日本酒を絞った後の工程(濾過、火入れ、貯蔵、加水)を行わない日本酒です。絞ったままの日本酒の風味を味わえます。品質管理が難しく昔は流通できませんでしたが、技術発展により流通できるようになりました。
- 特記3:生酛(きもと)とは、蔵にいる乳酸菌や天然の微生物を使用する昔ながらの製法です。山廃との違いは、お米が溶けやすくなるように酒母(お酒の酵母培養用の液体)を混ぜる作業を行います。(山廃の場合は行わない)山廃造りより乳酸の酸味が強く、濃厚な味わいになりやすいです。
ラベルよりデータを参照
※1 山田錦は酒造りによく使用される酒造好適米(使用量1位)。こってり濃厚な風味になりやすいっです。大粒で砕けにくいので低精米歩合(50%以下)に向き、高級酒に向いています。
スペック的にあまり磨いていない山田錦を使用した、お米の風味が強そうな純米酒です。
アルコール度数も強いのでさらに濃いめになっていそうです。
また、槽場直詰、無濾過生原酒、生酛と要素が多く、
個性豊かなお酒を期待できます。
大矢孝酒造様は、全てのお酒を米、水、麹のみで製造して、
醸造アルコールは使用していません。
特に水は、太平洋戦争中に「赤道を超えても腐らない水」と重宝された
丹沢水系の水を使用しています。
実際に飲んでみましょう
さて、
封を開けて匂いを嗅いでみると、豊満なお米の香り!
山田錦をあまり磨いていないので、しっかりしたお米の風味があります。
また、乳酸と生酒の青い香りもあり、爽やかさも感じます。
そのままお酒を口に運んでみると、
槽場直詰により残った炭酸ガスの刺激が強いです。
味は、お米のふくよかな風味と強めの乳酸があり、力強いです。
特に乳酸の酸味が爽やかで、とてもスッキリしています。
後味に、生酒、強アルコール由来の強い苦みが襲ってきます。
まとめ
今回は、
槽場直詰のそのままの酒!「昇龍蓬莱 きもと純米」を飲んでみました。
山田錦のお米の風味、槽場直詰のガス感、生酒の清涼感、生酛の乳酸、強アルコール。。。
色々な要素がありながら、それぞれの個性が損なわれずまとまっているお酒でした。
最後に日本酒の風味分類を行います。
(日本酒の風味分類の詳細についてははじめにの「日本酒の風味分類について」をご参照ください。)
後々にこの日本酒がどのような風味なのか思い出すのに役に立ってもらえるでしょう。
日本酒には以下のタイプがあります。
- 華やかなフルーツの香りを持つフルーティタイプ
- 昔ながらのお米、乳酸の香りが強いオリジナルタイプ
- 熟成させて熟成香が出てきたエイジングタイプ
今回の「昇龍蓬莱 きもと純米」は、
昔ながらのお米、乳酸の香りが強いオリジナルタイプとなります。
ふくよかなお米の香りがありますが、
乳酸、青い香りの爽やかさもあり、強めとしました。
味は炭酸ガスのガス感、お米の風味、生酒、アルコールの苦みと
それぞれの要素は強めですが、
香りと同じく乳酸の酸味がとても爽やかなため、強めとしました。

以上、ご閲覧ありがとうございました。
皆様の今宵のお酒のヒントになれたら幸いです。
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